〜サモアン・パワーが炸裂!日本代表は自国開催のW杯に向けて大丈夫?〜



日時:2011年7月2日(土)
場所:秩父宮ラグビー場

【熱狂応援映像 ※写真クリック】 

 

 

 ラグビーの試合時間は前半40分に後半40分の計80分、その試合開始早々、わずか1分後に得たサモア代表の反則によるペナルティ・ゴールを日本代表は外してしまう。結果的には残り79分というところで起こしたこの失敗が痛恨のミスであり、日本代表の敗北を決定づけたようなものである。

 ボールからの角度はゴールに向かって左からきわどく、距離もフィールドの半分近くあったため、そのペナルティ・ゴールは決して簡単だったわけではない。しかしペナルティ・ゴールを選択した日本代表のライアン=ニコラス選手は、より確実に決めておくべき先制のチャンスを逃してしまった。勝ち運を相手のマヌサモアに見す見す渡してしまったのだ。

 サモアが先制したのはそのたった1分後のことである。アレサナ=トゥイランギ選手がゴールやや左から中央へ走りぬけるトライ。ほぼ正面からのゴールもジェームス=ソーイアロ選手が難なく決め、開始3分でサモアが7-0。日本はいきなり苦境からのスタートを余儀なくされる。

 日本代表はその4分後のペナルティ・ゴールも今度はショーン=ウェブ選手が外してしまい、何とか盛りかえそうという機会を二度も逸してしまう。一方のマヌは前半12分にジェームズ=ソーイアロがペナルティ・ゴールを決めて早くも10-0と、一方的な試合になりそうな雰囲気が序々にじみでてくる。

 前回、昨年の
1030日に行われた親善試合とはまるで両国の立場が入れかわったかのような出だしの様相だ。あの時はそれからサモアが盛りかえして、見事逆転勝利を飾ったのであった。

さて日本代表もここでおとなしくしている場合ではないだろう。世界ランキングでは日本が13位に対してサモアが11位。前回のお返しにと日本が大逆転を起こしても不思議ではない。力の差は僅かなはず。

前半14分、マヌのアレサナ=トゥイランギ選手は再びフィールドの一番右端にトライを決めるが、これが大いに物議をかもした。エンドラインから出たボールに対し、上から手でタッチするといったいわば「後出しトライ」だったのだ。しかし、レフェリーはこれをれっきとしたトライであると判断し、その直後の角度が厳しいゴールキックをまたしても当たっているジェームズ=ソーイアロが決め、一気に17-0にまで点差が開いてしまった。

 どうにかしてペースをとり戻したい日本は、この後から少しずつ時間をつくり始める。地に足がついていなかったそれまでとは変化がつき、特に形をスクラムにもちこめば同等、もしくは相手以上の組織力で対抗できるようになってきた。

 そして前半20分、その成果が初得点へと結ぶ。トンガ出身の日本代表、ホラニ龍コリニアシ選手がスクラムで距離をかせいだ後のサイドから突破による堂々としたトライで17-5。この選手はトンガから日本へ留学しに来てから本格的にラグビーを始めるようになったという、ユニークな選手だ。

 しかしトライ後のキックを、今日当たっていないライアン=ニコラスが再び外してしまい、せっかく生じた押せ押せムードを自ら断ちきってしまう。日本の応援席からもいい加減ヤジが飛び始めた。

 ライアン=ニコラスはその7分後、サモアの反則から得たペナルティ・ゴールさえ外すに至り、ついに客席からは「ふざけんなよ、全部入れてれば17-16で一点差じゃないか」という不満の声さえきかれた。ここに来ていらだちを隠せない日本サポーターだったが、勝負の世界に「たら・れば」が無しなのは全員、よく分かっていることなのだ。しかし、日本代表の精細を欠いたプレーにいささか文
句を言いたくなる現状も理解できた。


 その客席の雰囲気が選手まで伝わったとは思えないが32分、日本代表のショーン=ウェブが今度はペナルティ・ゴールをきっちり決め、17-8とまでした。

 前半残り8分である。ここの時間の使い方によっては、後半日本が盛りかえせる原動力を産みだせる。ペナルティ・ゴールの3点でもトライの5点でも一つ奪っておけば、きっかけをつかめそうだった。

 逆にマヌはここで追加点を取ってしまえば、相手の追撃の芽を摘みとっておく、試合運びの上では重要な時間帯を迎える。

 制したのはマヌだ。34分、マナイア=サラベア選手が流れを完全にサモアにたぐりよせるトライ!今日は本当に当たっているジェームズ=ソーイアロが三度目のゴールも決め、何と24-8、サモアが圧倒的有利な状態で前半を折りかえした。

後半、敗戦色濃い日本であるが、どこまでマヌに対して歯向かえるか。W杯自国開催に向けての真価が問われる時である。

 サモアは開始早々に日本の反則から奪ったペナルティ・ゴールを、断然調子が良かったはずのジェームズ=ソーイアロが外してしまう。本日初のゴール失敗だ。スポーツの試合ではこういう失敗が元で、流れが相手に渡ってしまうことが往々にしてある。日本代表としては反撃ののろしを上げるビッグチャンスだ。

会場の「日本がんばれ〜」という婦人ファンの叫び声が届いたのか、日本の足の運びが機敏になってきた。ここはふんばり処だ。そして3分後、ようやく、観客の声援が待望のトライを誘った。トライしたのは宇薄岳央。外国出身の選手が多い中、純血日本人プレーヤーのトライに、秩父宮ラグビー場にかけつけた日本のサポーターが今日一番の歓喜で沸きたった。それまではわりとおとなしく観ていた観客がわっと立ちあがって待ちに待ったトライを讃える瞬間だった。

 当たっていなかったはずのライアン=ニコラスがここはゴールをきっちり決めて24-15にまで迫る。最初から気負わずにキックを成功させていれば、ここまで苦しい展開にはならなかったものを。

 さあ日本代表としてはもう「行け行け」だ。サポータからも選手を鼓舞する声援がより一層高まる。もしたてつづけにトライを奪えば日本の逆転勝利も見えてくる。
 日本が得意のモール攻撃でボールを運ぼうすれば、マヌも何とか踏んばって押しかえす。日本のスクラムの場面となれば、マヌは逆に苦手意識があるらしく、まともに受けようとはしない。そこで下手にマヌがいなせば、日本が反則を取れるチャンスが増す。
 
 試合はこう着してきた。しかしこの状態が続くようでは残り時間が少なくなればなるほど日本が不利になってくる。サポーターたちの声援がボリュームを増す。意外にも多い婦人ファンの甲高い叫び声が観客席ではよく通って響きわたる。日本は次の得点をなるだけ早めに決めておきたい。マヌは次トライを取ってしまえば、相手の息の根を止められる。

 試合が動いたのは12分後の後半19分のことだった。ボール運びを制したのはここでもマヌである。サモア代表、ジョージ=ピシ選手が決定的なトライを決め、ついに観客の声援もため息に変わった。ジェームズ=ソーイアロのキックも難なくゴールを割ってこれで31-15。万事休すであった。

 25分のジェームズ=ソーイアロ今日2本目のペナルティ・ゴールはおまけのようなものだろう。試合終了のブザーが鳴った時には34-15と、ダブルスコアでマヌが見事、日本代表を打ち負かしていた。

 少人数ながらも会場の一部で応援していたサモアのサポーターたちは、大多数の日本人サポーターたちに遠慮をしながら勝利の歓喜に踊った。そして「ニホン、ガンバレ。マタヨロシク」といういたわりの声をかけることも忘れなかった。

 個人的には、マヌが勝ってよかったわけだが、こうまで日本が惨敗するとなると内心穏やかではない。もう少し競った試合になるのを期待していたからだ。日本代表が世界と同等にやり合えるまでにはまだ時間がかかるのだろうか。しかし2019W杯は日本を待ってはくれない。

 

平成23年7月16日 澤井慶太(H6-2・音楽)

















































































































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【ラグビー日本代表VSサモア代表の熱狂リポート!】
作成日:2010/11/23